多くの事業者が、業務上でETCを利用していると思います。
ETCは非常に便利ですが、ETCを通過するとき、特に領収書などを入手したりはせず、クレジットカード明細をもとに経費計上しているのがほとんどだったかと思います。
これまではクレジットカード明細から記載でも基本的に問題ありませんでした。「税込みの支払額が30,000円未満の場合には、請求書等の保存を要せず、法定事項が記載された帳簿の保存のみでよい(消費税法施行令49条1項1号)」という規定があったためです。
しかし、インボイス制度のもとでは、この特例がなくなります(基準期間の課税売上高が1億円以下の事業者については、2029年9月まで1万円未満の取引についてインボイスの保存を免除する特例あり)。ETCはインボイス発行が不要な取引の9パターンにも該当しておらず、インボイスの入手が必要になります。ETCのインボイスはどうやって入手すればいいのでしょうか?
<参考:インボイスの発行が免除される取引>
インボイス制度開始後はクレジット利用明細ではインボイスとしての記載が不足するため、別の方法でインボイスを入手することになります。
NEXCO西日本ホームページに掲示されているとおり、以下の方法によりインボイスを入手することができます。
(NEXCO西日本ホームページより)
ETCクレジットカードを利用している場合には基本的には一番下の方法(ETC利用照会サービスによる確定時の利用証明書)を使用することになります。インボイス対応のために毎回一般料金所の使用に変更して領収書をもらうのは現実的ではないでしょう。
インボイス制度開始後から、電子帳簿保存法開始までは、利用証明書を印刷して保管でも問題ないのですが、発行媒体が電子なので、電子帳簿保存法開始後は電子帳簿保存法にのっとった保存をしないといけません。
基準期間の課税売上高が5000万円以下の事業者については検索性の要件が免除され、いったんプリントアウトすることも認められますが、税務調査等で要求された場合はデータでの提出も必要になります。ETC利用照会サービスの表示可能期間は過去15カ月なので、調査時にデータが見られるようにデータ形式でも出力しておく必要があります。
当社はマネーフォワードを利用しているため、API連携で明細を取り込んでいますが、個別にPDFに出力するなどの方法ではけっこうな負荷がかかることが予想されます。利用者が多い場合は、API、RPAなど、自動処理の活用も検討してもいいかもしれません。
<参考:マネーフォワードのETC利用明細自動連携>
別コラムの「立替経費と電子帳簿保存法」でふれたとおり、電子データで提供されている書類は社員が立て替えた場合でも電子データで保存しないといけません。社員がETCを立て替えた場合にはETC利用照会サービスに登録してもらうことがほぼ必須になりますが、プリントアウトしてもってくるのは×です。メールで提出してもらうなど、データのまま提出してもらう業務フローを組む必要があります。
税務対策とは別の話になりますが、インボイス対策のためにETC利用照会サービスの登録の増加が予想されるためか、詐欺メールもかなり発生しているようです。ETC利用照会サービスのサイトにも注意喚起があがっていますので、注意してください。